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摩訶般若波羅蜜経無生品第二十六

四、スブーティ、世間の名字によって事物を知りまた得るという事を説く

舍利弗語須菩提。
今欲令以生法得道以無生法得道。
須菩提語舍利弗。
我不欲令以生法得道。
舎利弗が須菩提に語った。
「それでは、生ずるという理法をもって道を得させ、生じない事物をもって道を得させようと欲するのですか」
須菩提が舎利弗に語った。
「私は生ずるという理法をもって道を得させようとは欲しません」
舍利弗言。
今須菩提欲令以無生法得道。
須菩提言。
我亦不欲令以無生法得道。
舎利弗が言った。
「それでは須菩提、生じない事物をもって道を得させようと欲するのですか」
須菩提が言った。
「私はまた生じない事物をもって道を得させようとは欲しません」
舍利弗言。
如須菩提所
無知無得。
須菩提言。
有知有得不以二法。
今以世間名字故有知有得。
舎利弗が言った。
「須菩提が説明したことによると、知るということもなく、得るということもないのでしょうか」
須菩提が言った。
「知るということがあり、得るということがあっても、二つの理法によるわけではありません。
今世間における名称によって知るということがあり、得るということがあるのです。
世間名字故有須陀乃至阿羅漢辟支佛諸佛。
第一實義中無知無得。無須陀
乃至無佛。
世間における名称によって須陀、さらに阿羅漢、辟支仏、諸々の仏がありますが、
第一実義の中には知るということもなく、得るということもなく、須陀
もなく、さらに仏もありません」
須菩提。若世間名字故有知有得。
六道別異亦世間名字故有。非以第一實義耶。

「須菩提。もしも世間における名称によって知るということがあり、得るということがあるならば、
六道の別異もまた世間における名称によってあるのであって、第一実義によらないのではないでしょうか」

須菩提言。
如是如是。舍利弗。如世間名字故有知有得。
六道別異亦世間名字故有。非以第一實義。
須菩提が言った。
「そのとおり、そのとおり。舎利弗。世間における名称によって知るということがあり、得るということがあるように、
六道の別異もまた世間における名称によってあり、第一実義によるのではありません。
何以故。
舍利弗。第一實義中無業無報無生無滅無淨無垢。
舍利弗語須菩提。
不生法生。生法生。
どういうわけでしょうか。
舎利弗。第一実義の中には原因としての行いもなく、結果としての報いもなく、生ずることもなく、滅することもなく、浄まることもなくなく、垢つくこともないのです」
舎利弗が須菩提に語った。
「生じない事物が生ずるのでしょうか。生ずるという理法が生ずるのでしょうか」
須菩提言。
我不欲令不生法生。亦不欲令生法生。
舍利弗言。
何等不生法不欲令生。
須菩提が言った。
「私は生じない事物を生じさせようとは欲しません。また生ずるという理法を生じさせようとも欲しません」
舎利弗が言った。
「どのような生じない事物をも生じさせようとは欲さないのでしょうか」
須菩提言。
色是不生法。自性空不欲令生。
受想行識是不生法。自性空不欲令生。
須菩提が言った。
「物質的存在は生じない事物であり、それ自体の本性は空ですから生じさせようとは欲しません。
感覚・知覚・意志・意識は生じない事物であり、それ自体の本性は空ですから生じさせようとは欲しません。
乃至阿耨多羅三藐三菩提是不生法。自性空不欲令生。
舍利弗語須菩提。
生生不生生。

さらに阿耨多羅三藐三菩提、これも生じない事物であり、それ自体の本性は空ですから生じさせようとは欲しません」
舎利弗が須菩提に語った。
「生じたものは生じたのでしょうか、生じないものは生じたのでしょうか」

須菩提言。
非生生亦非不生生。
何以故。

須菩提が言った。
「生じたものは生じたのでなく、また生じないものは生じたのではありません。
どうしてでしょうか。

舍利弗。生不生是二法。不合不散無色無形無對一相所謂無相。
舍利弗。以是因
故。非生生亦非不生生。

舎利弗。生じたもの、生じないものという二つの事物は、合することもなく散ずることもなく、物質的存在でなく、形もなく、対するものもなく、一つの姿かたちであり、いわゆる姿かたちがないです。
舎利弗。こういうわけで生じたものは生じたのではなく、また生じないものは生じたのではないのです」

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著作 アルキメデスの館