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摩訶般若波羅蜜経金剛品第十三(丹本云摩訶薩品)

一、ブッダ、摩訶薩は金剛のごとき大心を生じて最上位者になると説く

爾時須菩提白佛言。
世尊。何以故。名為摩訶薩。
佛告須菩提。
是菩薩於必定
中為上首。
是故名摩訶薩。
その時、須菩提(スブーティ)が仏に申し上げた。
「世尊。どういうわけで、摩訶薩
(マハーサットヴァ、偉大な衆生)と名づけるのでしょうか」
仏が須菩提に次のように説いた。
「この菩薩は必定衆
(成仏すること必定の衆)の中で最上位者となる。
こういうわけで摩訶薩と名づけるのである」
須菩提白佛言。
世尊。何等為必定
。是菩薩摩訶薩而為上首。
佛告須菩提。
須菩提が仏に申し上げた。
「世尊。必定衆とは何であり、この菩薩摩訶薩はどうして最上位者となるのでしょうか」
仏が須菩提に次のように説いた。
必定者。性地人八人須陀洹斯陀含阿那含阿羅漢辟支佛。初發心菩薩乃至阿惟越致地菩薩。
須菩提。是為必定
菩薩。為上首(『。』欠)
「必定衆とは、〈聖なる〉性の生まれの人・八人地にある人(須陀向う人)・須陀(スロータアーパンナ、小乗仏教修行の第一の階梯)・斯陀含(サクリダーガーミー、第二の階梯)・阿那含(アナーガーミー、第三の階梯)・阿羅漢(アルハン、小乗仏教修行最高位)・辟支仏(プラティエーカ・ブッダ、独力で悟りながら他人に説かない小乗の聖者)、初発心(覚りに向かう心を初めて発した人)の菩薩から阿惟越致地(アヴァィヴァルティ、菩薩の不退転の位)の菩薩まで。
須菩提。これを必定衆とし、菩薩を最上位者とするのである。
菩薩摩訶薩於是中生大心。不可壞如金剛。
當為必定
作上首。
菩薩摩訶薩はこの中で、金剛のごとく破壊されない大心を生ずる。
まさに必定衆のために最上位者となるべきである」
須菩提白佛言。
世尊。何等是菩薩摩訶薩生大心。不可壞如金剛。
須菩提が仏に申し上げた。
「世尊。この菩薩摩訶薩が金剛のごとく破壊されない大心を生じるとはどういうことでしょうか」
佛告須菩提。
菩薩摩訶薩應生如是心。
我當於無量生死中大誓莊嚴。

仏が須菩提に次のように説いた。
「菩薩摩訶薩は、まさに次のような心を生じるべきである。
私はまさに無量の生死の中で大誓荘厳しよう。
我應當捨一切所有。
我應當等心於一切
生。
我應當以三乘度
一切生。令入無餘涅槃。
私はまさに一切の所有を捨てよう。
私はまさに一切の衆生の心を等しくしよう。
私はまさに三乗にわけて一切の衆生を救済し、さらに余すもののない涅槃に入らせよう。
我度一切生已。無有乃至一人入涅槃者。
我應當解一切諸法不生相。
我應當純以薩婆若心行六波羅蜜。
私が一切の衆生を救済してしまっても、一人でも涅槃に入ったものがいるとはしないようにしよう。
私はまさに一切の諸々の事物は生じないという姿かたちがあると理解しよう。
私はまさに純粋な薩婆若
(サルヴァジュニャーナ、一切智)を求める心で六波羅蜜を行じよう。
我應當學智慧了達一切法。
我應當了達諸法一相智門。
我應當了達乃至無量相智門。
私はまさに智慧を学び、一切の理法に了達しよう。
私はまさに諸々の事物は一つの姿かたちであるという智の門に了達しよう。
私はまさにさらに無量の姿かたちであるという智の門にまで了達しよう。
須菩提。是名菩薩摩訶薩生大心。不可壞如金剛。
是菩薩摩訶薩住是心中。於諸必定
而為上首。
是法用無所得故。
須菩提。これを菩薩摩訶薩が大心を生じ、金剛のごとく破壊されないと名づけるのである。
この菩薩摩訶薩がこの心の中に留まれば、諸々の必定衆で最上位者となる。
この理法は〈実体として〉認知することができないからである。
須菩提。菩薩摩訶薩應生如是心。
我當代十方一切

若地獄

若畜生

若餓鬼
生受苦痛。
為一一
生。無量百千億劫代受地獄中苦。
乃至是
生入無餘涅槃。
須菩提。菩薩摩訶薩はまさに次のような心を生ずるのである。
『私はまさに十方一切の衆生、
もしは地獄の衆生、
もしくは畜生の衆生、
もしくは餓鬼の衆生に代わって苦痛を受け、
一々の衆生のために、無量の百・千・億(億=十万)
(カルパ:四十里の岩山を天人が衣で拭いて摩滅し尽くすに要する時間)のあいだ代わって地獄の中で苦痛を受け、
さらにこの衆生は余すもののない涅槃にまで入るべきである』
以是法故為是生受諸懃苦。
生入無餘涅槃已。然後自種善根。無量百千億阿僧祇劫當得阿耨多羅三藐三菩提。
この理法によるから、この衆生のために懇ろに諸々の苦悩を受けるのである。
この衆生は余すもののない涅槃に入り、その後自ら善根を種え、無量の百・千・億の阿僧祇
(アサンキヤー:人知を超えた長い時間)の間、まさに阿耨多羅三藐三菩提を得ることになるである。
須菩提。是為菩薩摩訶薩生大心。不可壞如金剛。住是心中為必定作上首。 須菩提。これを菩薩摩訶薩が大心を生じ、金剛のごとく破壊されず、この心の中に留まり、必定衆のために最上位者となるというのである。

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著作 アルキメデスの館