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摩訶般若波羅蜜経相行品第十(行相品ならん)

五、ブッダ、諸々の事物には有るということがないことを説く

舍利弗白佛言。
世尊。菩薩摩訶薩若如是學。為學何等法。
舎利弗が仏に申し上げた。
「世尊、菩薩摩訶薩がたとえばこのように学ぶことは、どういう事物を学ぶということになるのでしょうか」
仏は舎利弗に次のように説いた。
佛告舍利弗。
菩薩摩訶薩如是學於諸法無所學。
何以故。
舍利弗。諸法相不如凡人(凡夫ならん)所著。
「菩薩摩訶薩がこのように諸々の事物を学ぶなら、学ぶものはないのである。
なぜであろうか。
舎利弗。諸々の事物の姿かたちは凡夫
(覚らざる者)が執着するようなものではないのである」
舍利弗白佛言。
世尊。諸法實相云何有。
舎利弗が仏に申し上げた。
「世尊、諸々の事物の真実の姿かたちはどのような有り方をしているのでしょうか」
佛言。
諸法無所有。如是有如是無所有。是事不知名為無明。
仏が言った。
「諸々の事物には有るということがないのである。このように有り、このように有るということがないのである。この事を知らないことを無明と呼ぶのである」
舍利弗白佛言。
世尊。何等無所有。是事不知名為無明。
舎利弗が仏に申し上げた。
「世尊。どのようなものに有るということがなくて、この事を知らないことを無明と呼ぶのでしょうか」
佛告舍利弗。
色受想行識無所有。
空乃至無法有法空故。
四念處乃至十八不共法無所有。
空乃至無法有法空故。
仏が舍利弗に次のように説いた。
「物質的存在・感覚・知覚・意志・意識は有るということがない、〈自己の〉内面は空あるいは存在せず存在するものは空だからである。
四つの観行あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物は有るということがない、内面は空あるいは存在せず存在するものは空だからである。
是中凡夫以無明力愛故。妄見分別是無明。是凡夫為二邊所縛。
是人不知不見諸法無所有。而憶想分別著色乃至十八不共法。
是人著故於無所有法而作識知見。是凡人(凡夫ならん)不知不見。
この中で凡夫は無明の力による激しい愛着のために、間違って〈ものは有ると〉見解し・分別して、これは無明、これは凡夫だなどと説明し、二つの偏った見解に縛られることになるのである。
こういう人は、諸々の事物には有るということはないことを知らず、〈そのように〉見ず、そして思い込み想像し・分別し、物質的存在あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物に執着するのである。
こういう人は執着しているから、有るということがない事物に対し、識知しているという見解をもつのである。こういう凡夫は知らず、見ないのである」
何等不知不見。
不知不見色。
乃至十八不共法亦不知不見。
以是故。墮凡夫數如小兒。
是人不出。
「どういうことを知らず、見ないのでしょうか」
「物質的存在を知らず、見ない。
さらには十八の〈仏以外には〉具わらない事物までもまた知らず、見ないのである。
こういうわけで、凡夫のたぐいに堕落するものは、まるで小児のようである。
こういう人は出ることはないのである」
於何不出。
不出欲界
不出色界
不出無色界。
不出聲聞辟支佛法中。
是人亦不信。
「何から出ないのでしょうか」
「欲の領域から出ず、
物質的存在の領域から出ず、
無物質的存在の領域から出ず、
声聞・辟支仏の理法の中から出ないのである。
こういう人はまた信じないのである」
不信何等。
不信色空。
乃至不信十八不共法空。
是人不住。

「何を信じないのでしょうか」
「物質的存在は空であることを信じず、
さらに
は十八の〈仏以外には〉具わらない事物までも空であることを信じないのである。
こういう人は留まらないのである」

不住何等。
不住檀那波羅蜜。
乃至不住般若波羅蜜。
不住阿惟越致地
乃至十(不ならん)住十八不共法。
以是因
故。名為凡夫如小兒。
亦名著者。
「何に留まらないのでしょうか」
「檀那波羅蜜に留まらない。
さらには般若波羅蜜に留まらない。
阿惟越致
(アヴァィヴァルティ、菩薩の不退転の位)の境地に留まらない。
さらには十八の〈仏以外には〉具わらない事物までに留まらない。
こういうわけで、凡夫と名づけられるのであり、小児のようなものである。
また執着する者とも名づけられるのである」
何等為著。
著色乃至識。
著眼入乃至意入。
著眼識界乃至意識界。
著婬怒癡。
著諸邪見。
著四念處。
乃至著佛道。
「どのようなことを執着するというのでしょうか」
「物質的存在から意識までに執着すること、
視覚器官から認知器官までに執着すること、
視覚の領域から認知機能までの領域に執着すること、
婬・怒・痴に執着すること、
諸々の邪見に執着すること、
四つの観行に執着すること、
あるいは仏道に執着することである」

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著作 アルキメデスの館