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摩訶般若波羅蜜経習応品第三

三、菩薩の因縁により諸善法の生ずることを説く

舍利弗白佛言。
云何菩薩摩訶薩。過聲聞辟支佛地。住阿惟越致地。淨於佛道。
舎利弗が、仏に申し上げた。
「菩薩摩訶薩が声聞、辟支仏の境地を通過して、阿惟越致(アヴァィヴァルティ、菩薩の不退転の位)の境地にとどまり、仏道を浄める、とはどういうことなのでしょうか」
佛告舍利弗。
菩薩摩訶薩從初發意行六波羅蜜。住空無相無作法。能過一切聲聞辟支佛地。住阿惟越致地。淨於佛道。
仏は舎利弗に次のように説いた。
「菩薩摩訶薩は初めに発意したときから六つの波羅蜜を修行し、空・無相・無作のあり方にとどまり、一切の声聞・辟支仏の境地を通過して阿惟越致の境地にとどまることができ、仏道を浄めるのである」
舍利弗白佛言。
菩薩摩訶薩住何等地。能為諸聲聞辟支佛作福田。
舎利弗が、仏に申し上げた。
「菩薩摩訶薩はどのような境地にとどまることによって、諸々の声聞・辟支仏のために福〈を栽培する〉田を作ることができるのでしょうか」
佛告舍利弗。
菩薩摩訶薩從初發意行六波羅蜜。乃至坐道場。於其中間。常為諸聲聞辟支佛作福田。
仏は舎利弗に次のように説いた。
「菩薩摩訶薩は初めに発意したときから六つの波羅蜜を修行し、そして〈覚り達成の〉道場に坐るに至り、その途中の過程において、常に諸々の声聞・辟支仏のために福田を作るのである。
何以故。
以有菩薩摩訶薩因
故。
世間諸善法生。
何等是善法。
なぜであろうか。
菩薩摩訶薩の因縁があるから、
世間の諸々の善法が生ずるのである。
この善法とは何であろうか。
所謂十善道五戒八分成就齋。
四禪四無量心四無色定。
四念處四正勤四如意足。
五根五力七覺分八聖道分。
盡現於世。
いわゆる、十の善い行い・五つの基本的規範・八分割した成就のための斉戒日、
四つの禅・四つの限りのない心・四つの物質的存在の無いことの瞑想、
四つの観行・四つの正しい勤め・四つの神秘的の能力、
〈覚りを得るための〉五能力・五つの能力・七つの覚りの要素・八つの正しい道であり、
〈これらが〉ことごとく世に現われるのである。
以菩薩因故。
六波羅蜜十八空佛十力四無所畏四無閡智。
十八不共法大慈大悲一切種智。
盡現於世。
菩薩の因縁によって、
六つの波羅蜜・十八種の空・仏のもつ十の力・四つの畏れないことの物質的存在・四つの妨げられることのない智、
十八の〈仏以外には〉具わらない事物・広大無辺の慈悲・一切種智が、
ことごとく世に現われるのである。
以菩薩因故。
利大姓婆羅門大姓居士大家。四天王天乃至非有想非無想天。
皆現於世。
菩薩の因縁によって、
刹利(クシャトリヤ、王族)の家系・婆羅門(ブラーフマナ、バラモン)の家系・在家信徒の大家、
四天王天あるいは非有想非無想天があり、
みな世に現われるのである。
以菩薩因故。
有須陀洹斯陀含阿那含阿羅漢辟支佛佛
皆現於世。
菩薩の因縁によって、
須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・仏があり、
みな世に現われるのである」
舍利弗白佛言。
菩薩摩訶薩淨畢施福不。
舎利弗が、仏に申し上げた。
「菩薩摩訶薩は福を施すことを浄めつくすべきでしょうか、べきでないでしょうか」
佛言
不也。何以故。本已淨畢故。
舍利弗。菩薩摩訶薩為大施主。施何等。
施諸善法。
仏が言った、
「そうではない。なぜかというと、もとからすでに浄めつくされているからである。
舎利弗、菩薩摩訶薩は大施主となって、どのようなものを施すのであろうか。
諸々の善法を施すのである。
何等善法。
十善道五戒乃至十八不共法一切種智。
以是施與。

どのようなものを善法というのか。
十の善い行い・五つの基本的規範あるいは十八の〈仏以外には〉具わらない事物・一切の個々の現象諸相の相違を見極める智慧をいう。
これらを施すのである」

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著作 アルキメデスの館