原発の安全性への疑問

大事故を起こした福島第一原子力発電所での役に甘んじていた頃、筆者の目に入った原子力発電関係の書物はいずれをとってもその安全性の根拠にラスムッセン報告を取り上げていた。この報告によると、原発事故のおきる確率は1プラントあたり1年間に10億分の1で、(神話でなく科学的に)心配するような事故が起きることはないとのことだった。

この書物はMITを中心とする科学者たちがまとめた、ラスムッセン報告に対する科学的な批判論文の一つであり、1977年に公表された。日本では2年後に翻訳が出版されたが、電力会社も通商産業省も黙殺したようで、その後も原発推進は精力的に行われた。現在古書市場にほとんど見られないことから、発行当時に買い占めがあったのかもしれない。

1979年1月に米国ではNRCがラスムッセン報告支持を撤回、同3月にTMI原発事故が起きたが、我が国では専ら「このような事故は起こりえない」というご託宣によって安全神話が再確認されただけである。付け加えれば、ラスムッセンはMITの大先生だったのだが、同じMITを中心にUSCが批判論文をまとめたというところに米国にも好ましい一面があったということに感慨を覚える。

平成24年7月5日に国会事故調の『報告書』が公表されたが、この『報告書』を読むと、この書物がいかにも邪魔なレポートだったであろうことが推察される。 

 

THE RISKS OF NUCLEAR POWER REACTORS
A Review of the NRC
Reactor Safety Study
WASH-1400 (NUREG-75/014)

UNION OF CONCERNED SCIENTISTS
CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS
AUGUST 1977

原発の安全性への疑問
――ラスムッセン報告批判――
憂慮する科学者同盟(UCS)編

日本科学者会議原子力問題研究委員会訳(安齊育郎他)
株式会社 水曜社、1979年6月5日

 

 

 

 

 

著作 アルキメデスの館