『パラサイト・シングルの時代』

ジャンル:社会・評論(評者:三浦淳)

  著者:山田昌弘

 出版社:筑摩書房

本体価格:660円

発刊年月:1999/10

  判型:新書(ちくま新書)

ページ数:204P

ISBN4-480-05818-4

《著者の説明は多方面に目配りがきいており、自由闊達かつ明快である。家族や社会を論じる人にありがちな、特定のイデオロギーに縛られるという弱点がないので、誰が読んでもうなずけること請け合いである。》

【満足度評価】★★★★

 パラサイトという言葉は、少し前に『パラサイト・イヴ』という小説と映画がヒットして日本でもおなじみになった。寄生動物という意味の英語だが、著者の規定によると、成人しても学校を卒業して勤めに出ても親と同居しつづける独身男女がパラサイト・シングルである。この概念によって現代日本の未婚化・晩婚化・少子化をうまく説明できるのだという。
 パラサイト・シングルは無料で、或いはわずかな金を家に入れることで、食事や家事、部屋などを親から提供してもらっている。高収入を得ている父の持ち家に住んでいるからこそ、彼らは家賃など、一人暮らしをした場合にかかる基本的で膨大な費用を出さずに済む。家事の達人である母と同居しているからこそ、料理・清掃・洗濯等に追われることなく、仕事以外の時間を自由に使えるのである。そして金銭的にも時間的にも優雅な生活を送っているパラサイト・シングルは、親の家を出て自立した生活をしようとはしない。一人暮らしはコストと時間を食うので、生活水準の低下につながるからだ。
 この種のパラサイト・シングルが著しく増えたために未婚化・晩婚化が進み、それが少子化に結びつく。日本では結婚した女性の出生率はここしばらくほとんど変化がなく、出生率の低下は結婚しない男女の増加によってもたらされているというのが実態なのだ。
 著者の説明は多方面に目配りがきいており、自由闊達かつ明快である。家族や社会を論じる人にありがちな、特定のイデオロギーに縛られるという弱点がないので、誰が読んでもうなずけること請け合いである。パラサイト・シングルは日本と韓国に多いが、近年スウェーデンでも増加のきざしがあるというのも面白い。
 ただ、最後にパラサイト・シングルを克服する処方箋が挙げられているが、ここはやや心許ない。著者の主張するように親子同居税を課すというのも確かに一案かも知れないが、親から離れて一人暮らしをしたり、若い男女が結婚生活を送ることに夢を持てるような、いい意味でのイデオロギー形成を我々全員で考えていく必要があろう。
【評者プロフィール】

■三浦淳(みうら・あつし)
E-mail:miura@human.ge.niigata-u.ac.jp
http://hav.hle.niigata-u.ac.jp/miura/Default.htm
1952年、福島県生まれ。本来は大学のドイツ語教師なのだが、最近の「大学改革」でドイツ語以外の余技(?)を活かした授業が増えている。